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オスのあたま一齧り連続殺サケ事件  

 12月に入り、この時期のクマの行動を知りたくて河原へ出かけてみた。澄んだ流れの中にはまだ、遡上してきたサケが少なからず泳いでいた。ただ、アベレージサイズはピーク時に比べ小振りである。遡上末期になると比較的若い個体が多くなるのは、おそらくこの川の傾向なのだろう。

 流れを横目に上流へ向かうと、数本のサケの死体が転がっていた。どの死体も、その肉の乾燥具合から見てほぼ24時間以内のもので、一様に頭を一齧りされている。良く見ると、すべてオスであった。

sal2.jpg

 更に上流に100メートルほど行くと、河畔林の中にまた数本のサケが転がっていた。やはり24時間以内のもので、全て頭だけを食われたオスのサケである。そばの流れを覗き込むと、産卵床を掘るペアの姿がそこら中に見られる。メスがいない訳ではない。明らかにオスだけを狙っている。

 この犯クマ、おそらくはここを縄張としている個体であろう。もし分散途中の個体であれば、せっかくの御馳走、もっと丁寧にたいらげるのではないだろうか。それに、オスだけ食べているのは不自然である。
 転がっているサケの死体は、どれもほぼ同時刻に食われたものであり、それ以前のものが見つからないという事は、ここを利用するのは数日おきである。周辺にはカモメやカラス、キタキツネやエゾタヌキが多いとはいえ、すべての死体を3・4日で片付けているとは思えない。比較的広い縄張を有している可能性がある。また、周辺には小熊の痕跡が一切見当たらない事、食べ方がどれも同じである事から、単独で行動している可能性が高い。それらの状況から総合的に判断し、犯クマはオスであると思われる。

 さて、解せないのは犯行動機である。なぜ「オスの頭」なのだろうか。さらに、一齧りはなぜなのだろうか。

sal3.jpg

 これは正直言ってクマに聞いてみないと解らない。単にこのクマの嗜好かもしれない。ただ、考えられるのは、8月からサケの遡上が本格化し、それから約4ヶ月が経過している。クマは既に食べ飽きてしまったのかもしれない。それから、春先に好んで食べている植物でも、成長して固くなると食べなくなる。初夏の蕗、秋の木の実・茸等、ほぼ旬のものしか食べていない事から、この時期のサケは既に旬を過ぎていて、どちらかというと不味いのではないのだろうか。しかしその中で、「オスの頭」だけは例外で、まだまだイケルのかもしれない。これについては一度、実際に食べてみて、人間にとってもそうであるのかを検証してみると面白いかもしれない。もしかすると、漁師も知らない新事実の発見か?

sal1.jpg

 これらの写真を見ると、なんとも贅沢で勿体ない食べ方をしているように見える。また、無駄な殺生ともとれなくもない。
 しかし、この行動はサケが運んだ海の栄養素を森へ引き上げ、更に奥へと拡散させるための最初のプロセスであり、海と森を繋ぐというとても重要な意味を持っている。
 
 自然は、無駄がないのだ…。
 



エゾヒグマ
Ursus arctos yesoensis
クマ科クマ亜科クマ属ヒグマの1亜種
ちなみに、本州に生息するツキノワグマは別種


サケ(シロザケ)
Oncorhynchus keta
サケ科サケ属サケ
このブログに既出のサクラマスは同じサケ属(Oncorhynchus)であるが、
アメマスはイワナ属(Salvelinus)である。

category: モンライケ

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